交通事故の慰謝料・示談お悩み解決ルーム

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仕事中・通勤中の交通事故で労災保険を使う方法と自賠責保険との違いとは?

仕事中・通勤中の交通事故は労災使用できるケースも!

(最終更新日2022.5.15)

 

仕事中・通勤中の交通事故では、労災保険を使用できるケースがあります。本記事では、仕事中・通勤中の交通事故で使える労災保険のメリットや自賠責保険との違いを解説します。

 

 

仕事中・通勤中の交通事故は、労災保険でも補償される!

仕事中・通勤中の交通事故では、被害者は加害者の任意保険や自賠責保険以外に、自分の労災保険からも補償を受けられます。

 

労災保険とは、正式名称を労働者災害補償保険といい、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して国が保険金を支払う制度です。労災保険の対象となる労働者には、正社員だけでなく契約社員やアルバイト・パートなどの非正規雇用もふくまれます。つまり、事業主から賃金を得ているすべての従業員が給付の対象です。

 

そのため業務中(仕事中)の事故や通勤中の事故では、非正規雇用も含めすべての労働者が労災保険を使えます。具体的なケースとしては、

  • 会社の営業車で取引先に向かう途中、事故に遭いケガをした(業務中の事故)
  • 会社に届け出ている通勤経路で会社から帰宅する途中、事故に遭いケガをした(通勤中の事故)

などが考えられます。

 

労災保険と自賠責保険は併用できる?

交通事故の被害者となって補償を受けるにあたり、請求先として一般的なのは加害者の自賠責保険です。自賠責保険とは、正式名称を自動車損害賠償責任保険といい、交通事故の被害者に対する最低限の補償として、自賠責保険会社が保険金を支払う制度です。

 

では、交通事故では労災保険と自賠責保険は併用できるのでしょうか?

 

労災保険と自賠責保険は原則、二重取りできない

結論から言えば、交通事故では原則として、労災保険と自賠責保険は併用できません。

 

というのは、労災保険と自賠責保険とで重複する損害費目について、労災保険では「支給調整」を行い、自賠責保険でも「損益相殺」を行うからです。

 

労災保険の「支給調整」とは、自賠責保険から保険金支払いが行われている損害費目について、労災の保険金を給付しなかったり少なくしたりすることをいいます。また、自賠責保険の「損益相殺」とは、労災保険から保険金給付が行われている損害費目について、自賠責の保険金を支払わなかったり少なくしたりすることをいいます。

 

「支給調整」も「損益相殺」も、被害者が補償を二重取りし、実際の損害額よりも多くの支払いを受けることを防ぐ目的で行われます。労災保険と自賠責保険のどちらを優先して使用するかは被害者自身で選択できますが、労災保険と自賠責保険の二重取りは原則できません。

 

 例外的に二重取りできる損害費目も

しかしながら、例外もあります。労災保険で後遺障害7級以上であれば、自賠責保険の後遺障害補償にあたる後遺障害慰謝料と逸失利益の賠償を受けても、7年経過後から労災保険の障害補償年金が支給されます。詳しくは後述します。

 

労災保険と自賠責保険とはどう違う?

労災保険と自賠責保険とは制度が異なるため、補償内容に以下の違いがあります。

 

 

事項

労災保険

自賠責保険

1

支払い限度額

なし

傷害部分は120万円、後遺障害部分は後遺障害等級別に75万円〜4000万円

2

休業補償(休業損害)

休業4日目から平均賃金の60%+休業特別支給金20%

日額6100円(立証資料があれば日額1万9000円を限度とする実額)

3

入院諸雑費

なし

日額1100円(立証資料があれば必要かつ妥当な実費)

4

慰謝料

なし

入通院慰謝料:日額4300円、後遺障害慰謝料:後遺障害等級別に32万円〜1650万円、死亡慰謝料:400万円、近親者慰謝料:請求権者の人数で異なる

5

障害補償年金

あり(後遺障害等級7級以上)

なし(逸失利益として一時金のみ支払い)

6

遺族年金

あり

なし

7

重過失減額

なし

あり(被害者の過失70%〜99%の場合に、傷害部分で20%、死亡・後遺障害部分で最大50%まで保険金を減額する)

 

労災保険を使えば休業補償を120%受け取れる

交通事故被害者は、労災保険を使うことで休業補償を120%まで引き上げることができます。

 

労災保険の休業補償とは

労災保険では、交通事故によるケガが業務災害や通勤災害に該当する場合、労働者(被害者)に休業補償金が給付されます。

 

具体的には、労働者(被害者)が、業務または通勤が原因となった負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、その4日目から休業補償給付と休業特別支給金が支給されます。

                           

労災保険で休業補償を120%受け取れる理由

休業補償給付では、休業4日目から、休業1日につき平均賃金額の60%を労働者に支給されます。このままでは残りの40%は損するように見えますが、休業補償給付で補償されない40%は自賠責保険に請求できますので、これにより休業損害の100%をカバー可能です。

             

さらに労災保険では、休業1日につき平均賃金の20%の休業特別支給金が支給されます。休業特別支給金は損害の填補を目的とするものではないことなどの理由で、加害者・保険会社からの損害賠償金から差し引かれない(損益相殺しない)とされていますので、被害者は、さきほどの100%に休業特別支給金の20%を加え、合計120%の休業補償を受け取れます。

             

労災保険には治療費の限度額がないが、自賠責保険は120万円が限度

労災保険では、労災病院や労災保険指定医療機関でケガの治療を受ける際、治療費に限度額なく療養補償給付を受けられます。つまり、ケガが治癒・症状固定するまで無料で治療を受けることができます。

 

一方、自賠責保険では、治療費など傷害部分の補償に120万円の限度額があります。被害者は、治療費など傷害部分の補償が120万円に達するまでは自己負担なく治療を受けられますが、120万円を超えた場合には、超過額は自賠責保険でまかなえませんので、加害者の任意保険会社や加害者本人に請求することになります。

 

労災保険なら治療費の打ち切りを心配せず治療を受けられる

多くの場合、加害者の任意保険会社は、自賠責保険の分も含めて直接病院に治療費を支払います。これを「一括対応」といいます。一括対応をした任意保険会社は、のちのち、立て替えた自賠責保険負担分を自賠責保険に請求しますが、自賠責保険の限度額を超過した分は任意保険会社が負担します。

 

しかしながら、任意保険会社は必要以上に治療費を支払いたくないと考えているため、一定の治療期間を過ぎると「もうケガは治っている、症状固定している」と判断し、一括対応を取りやめ、治療費を病院に支払わなくなる「治療費の打ち切り」を行います。こうなると、被害者は十分な治療が受けられなくなる可能性が出てきます。

 

その一方で、労災保険には治療費に自賠責保険のような限度額がないため、治療費の打ち切りを心配せず治療を受けられます。

 

労災保険は被害者に重過失があっても治療費全額が給付される

交通事故では、事故の責任の大部分が被害者にあるケースもあります。自賠責保険では、被害者の責任が70%〜99%の場合、支払う保険金に重過失減額という減額を行います。重過失減額では、自賠責保険の保険金を傷害部分について20%、死亡・後遺障害部分について過失割合に応じ20%〜50%で減額します。

 

他方で、労災保険には重過失による支給制限の規定があるものの(労働者災害補償保険法12条の2の2)、交通事故においては実務上ほぼ行われていません。したがって、被害者に70%〜99%の重過失がある事故でも治療費全額が給付されると考えてよいでしょう。

 

なお、被害者の過失が100%の場合には、自賠責保険からも労災保険からも保険金は支払われませんので注意が必要です。

 

労災保険を使うと、後遺障害の補償を二重取りできる場合がある

後遺障害が残るほど大きな被害を受けた場合、その精神的苦痛ははかりしれませんし、仕事に支障が出たりそもそも働けなくなったりなどで、本来得られたはずの収入が減少することがあります。そのため自賠責保険では、被害者に後遺障害慰謝料や逸失利益を一時金として支払い、損害を補償します。

 

一方、労災保険でも後遺障害の補償はあり、後遺障害1級〜7級に認定されると一生にわたって障害補償年金が支払われます。

 

後遺障害7級以上なら、自賠責の後遺障害補償を受けても、7年経過で障害補償年金が支給される

自賠責と労災保険は二重取りできないのが原則ですが、実は、後遺障害7級以上の後遺障害補償では、本来二重取りできないきまりの自賠責保険と労災保険で保険金の二重取りが例外的に可能です。具体的には、後遺障害7級以上で自賠責保険から後遺障害補償を受けた場合、7年経過後に障害補償年金を受け取れる状態になります。

 

例えば、後遺障害7級に認定され、

  • 自賠責保険の損害賠償金が1000万円
  • 労災の障害補償年金が年額100万円

だった場合を考えてみましょう。

 

原則では、自賠責保険と労災保険で保険金の二重取りはできませんので、自賠責の損害賠償金1000万円を受け取ると、労災の障害補償年金年額100万円は10年間受給できず、11年目以降に初めて受給できる計算になるはずです(1000万円÷100万円=10年)。

 

しかし、10年経過せずとも、7年経過で障害補償年金を受給できるとする通知が、厚生労働省から都道府県労働局長あてに発令されています。つまり、このケースでは、労災保険を使ったことで年金3年分の300万円((100万円×(10-7年))=300万円)を二重取りできることとなります。

 

参考:厚生労働省

・第三者行為災害における控除期間の見直しについて(◆平成25年03月29日基発第329011号)

 

交通事故での労災保険の使用はメリット大!ぜひ申請を

これまで見てきたように、交通事故で労災保険を使うと多くのメリットがあります。逆にデメリットはほぼありません。

 

あえて言えば、労災保険指定医療機関以外を受診した場合、被害者自身あるいは被害者の勤務先による治療費の立て替えが必要になりますが、これはあくまで一時的なものですので、手続きをすれば返金されます。労災保険の申請は労働者の正当な権利ですので、まよっている場合には、ぜひ一度申請してみることをお勧めします。

 

交通事故の労災問題は弁護士に相談がベスト!

自分のケースが労災に該当するかわからない、あるいは労災申請の手続きがわからない、勤務先が労災申請を渋っているなどの場合には、弁護士に相談するのがベストです。

 

弁護士であれば、仕事中・通勤中の交通事故での労災申請についてわかりやすく説明してくれます。また、交通事故では労災申請以外にも、慰謝料や過失割合、後遺障害等級認定など複雑な問題がありますが、これらについても相談にのってくれます。

 

交通事故の被害者は怪我を負い、肉体的にも精神的にも大変な思いをしています。わずらわしい問題から離れて治療に専念するためにも、弁護士という専門家の手を借り、より円滑な解決を目指しましょう。

交通事故でむちうちに!慰謝料・示談金はいくら請求できる?

 

むちうちの交通事故慰謝料について徹底解説!

(最終更新日:2020年4月10日)

 

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交通事故被害に遭うと、むちうちの症状が出ることがあります。このむちうちになった場合、慰謝料・示談金はいくら請求できるのでしょうか?本記事では、交通事故によるむちうちの慰謝料について、定義、請求方法、相場などを詳しく解説します。 

 

 

 

交通事故被害によるむちうちの慰謝料とは

慰謝料の定義

交通事故における慰謝料とは、交通事故により受けた肉体的・精神的苦痛への賠償として、被害者が加害者に請求できる金銭を言います。

 

慰謝料は、通常、車両が壊れただけなどの物損事故の場合は発生せず、被害者が怪我を負う人身事故の場合にのみ発生します。

 

慰謝料に似ている言葉には、「損害賠償金」や「示談金」がありますが、「損害賠償金」は慰謝料や治療費、通院交通費など加害者に請求できる金銭すべてを指し、「示談金」は裁判や調停によらず加害者・被害者の話し合いで決めた、加害者が被害者に支払う金銭を指します。

 

慰謝料の種類

交通事故の慰謝料には、

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

の3種類があります。

 

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故により怪我を負い医療機関に入通院した場合に支払われる慰謝料です。 

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故による怪我が完治せず残った後遺症が、自賠責保険で定められた後遺障害として認められた場合に支払われる慰謝料です。

 

後遺障害には、最も症状の重い1級から最も症状の軽い14級までの等級があり、等級が重いほど支払われる後遺障害慰謝料は高額になります。

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故により被害者が死亡した場合に、被害者本人と近親者に対し支払われる慰謝料です。

 

むちうちでは入通院慰謝料のほか後遺障害慰謝料を請求できる可能性あり

むちうちで医療機関に入通院した場合、入通院慰謝料を請求できます。

 

また、むちうちの中には後遺障害として認定されるケースもありますので、その場合には入通院慰謝料のほか後遺障害慰謝料を請求できます。

 

交通事故のむちうちで後遺障害慰謝料を請求する方法

後遺障害等級認定を受ける

交通事故のむちうちで後遺障害慰謝料を請求するためには、まず自賠責保険の後遺障害等級認定を受ける必要があります。

 

後遺障害等級認定は、損害保険料率算出機構という機関の調査を経て、最終的には自賠責保険が行います。調査は、医師の診断書やMRI画像など書面によるものが基本ですので、有利な等級認定を受けるためには説得力のある資料を収集せねばなりません。

 

後遺障害等級認定の請求方法は2種類

後遺障害等級認定の具体的な請求方法としては、

  • 事前認定
  • 被害者請求

の2種類があります。

 

事前認定

事前認定とは、加害者の任意保険が被害者に代わって、自賠責保険に後遺障害等級認定の請求手続きを行う方法です。

 

事前認定では、被害者の手間が省けるというメリットがある一方で、任意保険に任せきりになり手続きの流れが不透明になるというデメリットがあります。また何より問題なのは、任意保険が、被害者に有利になるよう積極的に動いてはくれないことです。

 

さきほど述べたように、自賠責保険の調査は書面審査が基本ですので、有利な等級を認定してもらうには、積極的に立証資料を集める必要があります。ところが任意保険は、あくまで加害者側の立場にあり、支払う損害賠償金を極力少なくしたいと考えるため、被害者に有利な資料を集めてくれることは期待できないのが実情です。

 

被害者請求

被害者請求とは、被害者が自賠責保険に対し後遺障害等級認定の請求手続きをする方法です。

 

被害者請求のメリットは、

  • 後遺障害の立証資料を積極的に収集できる
  • 手続きに透明性がある
  • 後遺障害等級認定後、すぐに保険金が下りる

点にあります。

 

逆にデメリットは、被害者自身で手続きを行うため、手間がかかることです。もっとも、弁護士に被害者請求の手続きを依頼することもできます。交通事故や後遺障害に詳しい弁護士であれば、専門的知見を駆使して依頼者をサポートしてくれるでしょう。

 

むちうちの後遺障害等級認定なら被害者請求がお勧め

むちうちの後遺障害等級認定なら、事前認定よりも被害者請求をお勧めします。

 

むちうちは、骨折などと異なり自覚症状が中心となる怪我です。保険会社からも、「もう治っているはず」などと詐病扱いされ、治療費を打ち切られることも少なくありません。このような状態ですから、後遺障害の認定を受けるためには、被害者自らが積極的に立証資料を集められる被害者請求を選ぶべきなのです。

 

むちうちを後遺障害として立証するには

むちうちを後遺障害として認定してもらうには、

  • 症状の一貫性
  • 適切な頻度での通院の継続
  • 医証の充実

が必要です。

 

症状の一貫性

事故態様に合致する症状が、事故後から症状固定まで続いている必要があります。

 

適切な頻度での通院の継続

事故後から症状固定まで、継続的に通院している必要があります。通院頻度は週に3〜4回以上が望ましいです。

 

医証の充実

医証とは、医学的に証明できる証拠のことです。むちうちの場合、後遺障害診断書、レントゲン・MRIなどの画像所見、「ジャクソンテスト」、「腱反射テスト」、「スパーリングテスト」など神経学的検査所見などがそれに当たります。

 

しかしながら、交通事故の後遺障害等級認定に詳しくない医師の場合、むちうちを後遺障害として認定してもらえる医証を作成できないことがあります。その場合には、交通事故や後遺障害等級認定に詳しい弁護士に医師への医療照会を依頼し、後遺障害の残存について補足する回答書をもらうとよいでしょう。

 

交通事故のむちうちの場合、後遺障害等級は何級?

交通事故のむちうちが後遺障害等級として認定される場合、14級9号「局部に神経症状を残すもの」あるいは12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」となります。

 

むちうちの後遺障害等級認定では、14級9号のほうが12級13号よりもずっと多いです。

 

14級9号「局部に神経症状を残すもの」

後遺障害14級は、後遺障害等級の中で最も症状が軽い後遺障害です。

 

後遺障害14級9号「局部に神経症状を残すもの」として認定されるためには、症状が医学的に証明できなくても、医学的に説明できる症状である必要があります。

 

12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」

後遺障害12級は、後遺障害等級の中で下から3番目に症状が軽い後遺障害です。

 

後遺障害12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」として認定されるためには、症状が医学的に証明できる症状である必要があります。具体的には、レントゲンやCT、MRIなどの画像で症状を他覚的に証明できることが判断基準となります。

 

交通事故のむちうちで請求できる慰謝料の相場

交通事故のむちうちで請求できる慰謝料の相場は、後遺障害等級のほか、慰謝料計算で用いる基準によって変わります。

 

交通事故の慰謝料計算で用いる基準は、以下の3種類です。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

 

自賠責基準

自賠責基準とは、自動車損害賠償補償法に基づく最低限の補償をする損害賠償基準です。

 

任意保険基準

任意保険基準とは、任意保険が用いる損害賠償基準です。任意保険基準は、各保険会社の内部規定により設けられており詳細は公開されていませんが、これにより算出される損害賠償金は、自賠責基準より高く弁護士基準よりも低くなっています。

 

弁護士基準

弁護士基準とは、示談交渉や裁判において弁護士が用いる損害賠償基準です。これにより算出される損害賠償金は3つの基準の中で最も高額ですが、弁護士基準は弁護士しか使えません。

 

むちうちで通院6ヶ月(実通院日数50日)の入通院慰謝料

自賠責基準

自賠責基準の入通院慰謝料は、日額4,300円に入通院期間か実通院日数の2倍を乗じて計算します。

 

入通院期間と実通院日数の2倍のどちらを用いるかですが、2つのうち数の少ない方を用いることになっています。

 

したがって、むちうちで通院6ヶ月(実通院日数50日)の場合は、

 

 入通院期間(30日×6ヶ月=180日)>実通院日数×2(50日×2=100日)

 

ですので、日額4300円に実通院日数の2倍の100日をかけ、

 

 4300円×100日=43万円

 

となり、入通院慰謝料は43万円です。

 

任意保険基準

保険会社の任意保険基準が公開されていない旨は前述のとおりですが、かつて任意保険には、各社一律の支払い基準が定められていました。これを旧任意保険統一支払基準と言います。

 

任意保険の中には、今も旧任意保険統一支払基準を参考に支払いをしている会社もありますが、旧任意保険統一支払基準では、入通院期間をベースに入通院慰謝料を計算してます。これによれば、むちうちで通院6ヶ月(実通院日数50日)の入通院慰謝料は64万3000円です。

 

弁護士基準

弁護士基準では、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)という本をもとに、入通院慰謝料を計算します。

 

「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」では、通常用いられる別表Ⅰと、他覚所見のないむちうちで用いられる別表Ⅱとがあり、それぞれ入通院期間をベースに金額が算出されています。

 

これによれば、むちうちで通院6ヶ月(実通院日数50日)の場合は、

  • 他覚所見があるむちうち(別表Ⅰ):116万円
  • 他覚所見がないむちうち(別表Ⅱ):89万円

です。

 

むちうちは他覚所見がない場合がほとんどですので、原則として別表Ⅱが用いられると考えておくとよいでしょう。

 

むちうちで後遺障害14級の後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとに金額が決まっています。

 

むちうちで後遺障害14級の後遺障害慰謝料は、

  • 自賠責基準:32万円
  • 旧任意保険統一支払基準:40万円
  • 弁護士基準:110万円

です。

 

むちうちで後遺障害12級の後遺障害慰謝料

むちうちで後遺障害12級の後遺障害慰謝料は、

  • 自賠責基準:94万円
  • 旧任意保険統一支払基準:100万円
  • 弁護士基準:290万円

です。

 

むちうちで後遺障害等級認定をされると、慰謝料のほか逸失利益も

むちうちで後遺障害等級認定をされると、慰謝料のほか逸失利益と呼ばれる金銭を請求できます。

 

後遺障害等級認定でもらえる逸失利益とは

逸失利益とは、後遺障害がなければ本来得られるはずだった将来の収入のことを言います。

 

後遺障害により労働能力が減少すると、本来得られるはずだった収入も減ってしまいます。そのため被害者は、この減収分も逸失利益として損害賠償請求できます。

 

逸失利益の計算方法

逸失利益は、

 

 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 

という計算式で算出します。

 

ライプニッツ係数とは、中間利息控除するための係数です。

 

将来得られるはずだった収入を加害者から早期に受け取ると、被害者はそれを運用して金額を増やすことが可能となります。中間利息控除とは、これを調整するために用いられる手法です。

 

30歳で年収400万円・後遺障害14級の場合の逸失利益

30歳で年収400万円・後遺障害14級の場合、

 

  • 基礎収入:400万円
  • 労働能力喪失率:5%
  • 労働能力喪失期間:37年(就労可能年限を67歳とする)
  • 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:22.167(2020年4月現在の法定利率、年利3%として計算)

です。

 

ただし、2020年4月1日施行の改正民法では、法定利率は3年ごとに見直しを行うことになったため(変動利率制度の採用)、今後は今回計算した年利3%から変動する可能性があり、逸失利益の計算には注意が必要です。

 

交通事故のむちうちの慰謝料・示談金でお悩みの場合は弁護士に相談がベスト! 

まとめ:交通事故のむちうちの慰謝料・示談金を保険会社任せにしてはいけない

本記事のポイントをまとめると、以下のとおりです。

  • 交通事故のむちうちで後遺障害が残ると、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求できる
  • むちうちの後遺障害慰謝料請求方法は被害者請求がお勧め
  • むちうちで該当しうる後遺障害等級は14級と12級
  • むちうちの慰謝料相場を計算するには、3つの基準がある
  • 3つの基準の中で最も被害者に有利なのは弁護士基準
  • むちうちで後遺障害14級の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で110万円が相場
  • 後遺障害等級認定をされると、慰謝料のほか逸失利益を請求できる

 

交通事故被害による怪我の中でも、むちうちは最も多い怪我です。それはつまり、むちうちでお悩みの被害者も大勢いらっしゃることを意味します。

 

しかしながら、被害者の大半は慰謝料・示談金の仕組みをよく知らず、本来得られるはずだった慰謝料・示談金を失っているのが実情です。

 

むちうちのような比較的症状の軽い怪我であっても、慰謝料・示談金を保険会社任せにしてはいけません。正当な慰謝料・示談金を勝ち取るためには、慰謝料・示談金の仕組みをしっかり把握することが大切です。

 

交通事故に詳しい弁護士への相談で、むちうちの慰謝料・示談金が有利に!

むちうちの慰謝料・示談金の仕組みを把握する最も良い方法は、交通事故に詳しい弁護士への相談です。

 

本記事で述べた内容は、あくまで一般論であり、個々の事案によって適正な慰謝料・示談金は変わってきます。その点、交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、むちうちの慰謝料・示談金を、個別の事情を汲みながら適正に計算してもらえます。そもそも、被害者に最も有利な弁護士基準で慰謝料・示談金を計算することは、弁護士にしかできません。

 

また、交通事故に詳しい弁護士なら、後遺障害等級認定の申請をスムーズに行えますので、自分で申請するよりも有利な等級認定を得ることが可能です。後遺障害等級認定は、結果に納得できない場合、異議申し立ても可能ですが、異議申し立てで元の認定が上方修正される確率は極めて低いため、後遺障害等級認定を申請する前に、なるべく早い段階で弁護士に相談するのがベストです。

 

今は初回相談料が無料、着手金ゼロで完全成功報酬型の弁護士も増えています。一人で悩むよりも、専門家の手を借りて今の苦境を乗り切りましょう!